ジェームズ・アレン・ネット

ジェームズ・アレンとは?

2004年03月19日

 ジェームズ・アレンは不思議な文筆家です。示唆に富んだアレンの文章は、何百万もの人にずっと影響を与え続けています。しかし、今でもアレン自身についてはほとんどわかっていません。
 19冊の本のどれを読んでも、英国イルフラクームに住所があったという以外、生涯についての手がかりはありません。アレンの名前は、主要な参考図書にも載っていません。国会図書館や大英博物館でも、アレンについて述べたものはほとんどないのです。
 思考の力によって名声や富や幸福が得られる、と信じていたこの人物は、何者だったのでしょうか?あるいは、ヘンリー・デビッド・ソローの言葉を借りれば、「別の太鼓叩きに聴き入っていた」のでしょうか?
 ジェームズ・アレンは、名声も富も得ませんでした。それだけは本当です。アレンの才能は、世に表れず、報いのないものだったのです。アレンは、著作を出してもほとんど赤字でした。

 アレンは1864年11月28日、中部イングランドのレスター市で生まれました。それからしばらく経って家族の事業が失敗し、1879年、父親がアメリカに渡って損失を埋め合わせようとしました。父親はアメリカに定住することを望んでいましたが、家族を呼ぼうとした矢先、強盗に襲われて殺されてしまったのです。
 その結果、経済的に困窮したため、ジェームズは15歳で学校を中退しなければなりませんでした。それから、企業の役員を補佐する管理・運営担当者になったのです。1902年まで、いくつかの英国の製造業者でこの職を務め、それから執筆活動に入っていきました。
 不幸にも、アレンの執筆活動の期間は短く、1912年に亡くなるまで9年間しか続きませんでした。その間にアレンは19冊の本を書きました。その豊かな発想は、後世の人たちを大きな影響を与え続けています。

 最初の本『From Poverty To Power』を書き上げた直後、アレンは英国南西海岸のイルフラクームに引っ越しました。この小さな保養地には、海に面したヴィクトリア様式のホテルや、なだらかに起伏する丘、曲がりくねった小道がありました。この静かな雰囲気のおかげで、アレンは哲学的な研究を進めることができたのです。
 『As A Man Thinketh』はアレンの2冊目の本です。発行後にこれは人気が出たのですが、本人は満足していませんでした。これは最も簡潔で、内容も充実した本でしたし、アレンの思想をよく示した本ではあったのですが、その値打ちを自分では認めていなかったのです。妻のリリーは、それを出版させようとして説得を繰り返さなければなりませんでした。

 ジェームズ・アレンが望んでいた生活は、ロシアの文豪にして神秘的なレオ・トルストイ伯爵が描いた理想的な生活――すすんで清貧に甘んじ、自給自足し、禁欲的な自己訓練を進める生活――だったのです。トルストイのように、アレンは自分自身を向上させ、幸福になり、よいことはみな習得しようと努めていました。「世俗の人の至福」を探求する姿勢は、まさに典型的なトルストイアンだったといえます。
(※訳註:【トルストイアン】レフ・トルストイの思想を奉ずる人々。原始キリスト教的な隣人愛を説き、素朴な農民生活を理想とし、悪に対する無抵抗主義をとる。わが国の白樺派もその影響を受けた。(広辞苑より))

 妻によれば、アレンが「ものを書くのは、何か伝えたいことがあるときでした。その伝えたいことというのは、自分自身の生活の中で、それがいい生き方だとわかったときにだけ生まれてきたものでした」。
 イルフラクームでの一日は、夜明け前に石塚へと散歩することから始まりました。それは家と海を見下ろす山腹の石で覆われた場所でした。アレンはそこで1時間ほど瞑想します。それから家に戻って、午前中は執筆にとりかかります。午後は趣味の庭いじりに没頭していました。夜には、自分の著作に興味を持った人たちと会話をして過ごしました。

 ある友人は、アレンを「流れるような黒髪の、虚弱に見える小さな男で、キリストのようだ」と描写しています。
「夜にはいつも黒いビロード製のスーツを着ていたのを特に思い出す」
「そして、英国人、フランス人、オーストリア人、インド人のいたわたしたち少人数のグループに静かに語ってくれるのだった。瞑想について、哲学について、トルストイや仏陀について、あるいは庭のネズミ一匹に至るまでどんな生き物も殺してはいけない、ということについて」
「アレンの風貌、優しい話し方、そして夜明け前に丘に瞑想しに行くことについて、わたしたちはみな圧倒されていた」

 ジェームズ・アレンの哲学が可能になったのは、自由主義プロテスタンティズムが原罪という教義を捨てたからでした。この宗派では、「人はもともと罪深いものである」という教義ではなく、「人間はもともとよいものであり、神のような合理性を内に秘めている」という楽天的な信条を持っていました。
 この教義の逆転は、米国の哲学者ウィリアム・ジェームズが述べたように「19世紀最大の革命」だったのです。これは、ダーウィンの『種の起源』出版後に起こった、科学と宗教の和解に向かう動きの一部でもありました。
 チャールズ・ダーウィン自身は、『人間の系統』で信条の変化をほのめかしています。この本でダーウィンはこう書いています。
「わたしたちが自分自身の思考をコントロールするべきであると認識したとき、精神的な文化は最も高いステージとなりうる」と。
(※訳註:【自由主義プロテスタンティズム】は、19世紀のプロテスタントの中で、たとえば進化論を認めるなど、科学的な立場をとったもの。)

 アレンの著作は、このようにプロテスタント自由主義の影響を受けていますが、また、仏教思想の影響も受けています。例えば、仏陀は「今の自分がどのようなものであるかということは、わたしたち自身が考えてきたことの結果である」と説いています。アレンは聖書の言葉を借りて「人は心の中で考えたとおりのものになる」と言います。
 個々の人には自分自身の性格を作る力があり、そして自分自身の幸福を作り出す力があるのだ、とアレンは主張します。
「思考と性格は一つのものです。そして、性格は環境や周囲の状況を通してのみ明らかになります。ですから、ある人の人生の状態は、常にその人の心の中の状態と一致していることがわかるでしょう。これは、ある人の置かれた状況がいつでもその人の性格のすべてを反映しているという意味ではありません。そうではなく、この状況というのはその人自身の心の中でも大きな部分を占める思考と非常に密接な関係があるので、当面のあいだ、その人の進歩にとって不可欠なものである、ということです」

 アレンの著書を読むと、わたしたちは考え始めずにはいられません――何か別のことをしているときでさえも。思考がどのように行動を導くのか、アレンは語ります。わたしたちの夢を現実に変えるための方法を示します。
 アレンは、何百万人もの人たちに成功をもたらした哲学者です。それは、ノーマン・ヴィンセント・ピールの『積極思考』や、ジョシュア・リーブマンの『心の平安』の哲学です。
 わたしたちが精神的に豊かになるのは、心の中で一歩踏み出したとき、人生すべてに一定の法則があることに気づいたとき、瞑想の力を知ったとき、自然の法則と人生の法則が似ていることを経験したときだ――とアレンは書いています。

 アレンのメッセージは、混乱している最中にさえも希望をもたらしてくれます。
「そう、人の心は、コントロールできない感情が押し寄せ、制御できない悲しみで掻き乱され、不安や疑いによって吹き飛ばされるものです。賢明な者、つまり自分の思考をコントロールし、浄化した人だけが、その心の中の嵐を鎮めることができるのです。
 どこで浮世の荒波に翻弄されていても、人生がどのような状況にあろうとも、あなたの魂はこのことを知っています――人生の大海の中には幸福の島が穏やかにたたずんでいて、理想という名の日当たりのいい岸辺はあなたがやってくるのを待っている、ということを……」

 こうして、アレンは二つの重要な真理を教えてくれます。今わたしたちがいる状況というのは、わたしたちが過去に考えた思考によってもたらされたものであること。そしてわたしたち自身の未来は、自分自身がいいものにも悪いものにも変えることができるということです。


※この文章は、ネット上で広く公開されている「Who was James Allen?」という文章を翻訳したものです。


written by 松永英明 | この記事へのリンクURL[アレン略歴]

ご意見・ご感想

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[No.1] 投稿者:石川尚寛[2004年04月27日 12:38]
面白かった 知りませんでしたが、わかりやすく 読もうと思いました ひとつ気がかりなので、 多くの成功者を生み出したのに、 ご自身がなぜ成功していないかということです 彼自身の清貧な本質を読み取った人は 物質的な成功をしないのではないか 率直な感想でした
[No.2] 投稿者:おっちー[2004年05月28日 20:56]
ジェームズ・アレンの本を何冊か買いました。 少し読んで、著者本人はなぜ若くして亡くなったのか、 十分な成功をおさめられなかったのか、 気にかかりだしました。 でも、今は彼の考えのすばらしい部分は取り入れ、自分とは考えの合わないところは読み飛ばせばいいと思っています。 著者は(誰にもあるように)自分の目標と実際の行動が食い違ってしまことがあったのかも知れないし、 また成功するには若死にすぎたか、時代が早すぎたのかもしれませんね。
[No.3] 投稿者:津熊照美[2004年05月30日 15:37]
ジェームズ・アレンの思想は私の生きる基調となっています。 私は私が結婚のお世話をしている会員の誕生日には「原因と結果の法則」をプレゼントしています。
[No.4] 投稿者:津熊照美[2004年05月30日 15:43]
石川さん、おっちーさん。 ジェームズ・アレンの成功は物質的な事ではなく、彼自身が、この思いの悟りを開いた事ではないでしょうか。 肉体的生命において、彼は早くに亡くなったかも知れませんが、精神的にこの世での修行が終わったからこそ、早く亡くなったのではないでしょうか。私はそう考えます。
[No.5] 投稿者:中井 保晴[2004年06月06日 21:11]
私も津熊さんと同じ考えです。私は、異次元の存在との交流が少しできますので、ジェームズ・アレンと交流してみました。100年たった今でも、とても純粋な美しい心の方です。中井塾のウェブサイトにこの体験をエッセイとして掲載しました。ご興味がおありの方、どうぞご覧ください。=> http://www2.odn.ne.jp/nakai-juku/allen.html
[No.6] 投稿者:ぐっちー[2006年07月19日 15:56]
私もジェームズアレンに魅了された一人です。私がなぜジェームズアレンに魅了されたかと言うと私はよく「人生どうすればうまく生きられるのだろう?」と考えます。そんな中本を探しているとジェームズアレンに出会いました。彼は私考えることと非常に良く似た思考をしていたので興味を持ちました。今となっては彼の作品は私のバイブルとなっています。ところで話は変わりますが「原因」と」「結果」の法則とジェームズアレン全集どちらが皆さんはお好みですか?お聞かせ下さい。

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